配役交替

ナダル、ストレート負け。

テニスの全豪オープンが開催されている。年が明けて間もないが、グランドスラムとよばれる四大大会のうちのひとつが、睦月の温暖なオーストラリアで字のごとく熱戦を演じている。

準々決勝に進出した選手の顔触れは、戦前の予想通り極めて順当なものだった。世界1位のノバック・ジョコビッチをはじめ、3位ラファエル・ナダル、4位スタン・ワウリンカ、5位錦織圭、マレー、ベルディヒ、ラオニッチ、キリオスと名を連ねる。2位のロジャー・フェデラーを除く上位8人がシードのとおり、勝ち進んできた。そして、今日の準々決勝である。

テニスほど実力通りに試合が決するスポーツはあまりない。(シングルスに限れば)個人スポーツであるというのもその理由だが、能力の差が結果に結びつきやすいというのが大きい。パワー、スピード、スタミナ、この3つがテニスには最も重要だと考えられる。試合を優位に進めるサーブ(サービス)と展開を左右するリターンやショットはこのパワーに依拠する。返球に頭で反応する速度(反射神経)と、球を身体で追う速度がそのスピードから生まれる。テニスは数時間の長期戦になりがちなので、消耗戦となったときに求められる体力がそのスタミナとなる。この他にスキル(技術)が考えられるかもしれないが、試合全体を通してこの3つを凌ぐとは言い切れないので外すことにする。つまり、この三要素に基づく能力が選手には備わっており、その能力通りに試合が行なわれるならば、結果は見えているということだ。

そうしたなか、またひとり大会から姿を消した。ナダルだ。相手は格下のベルディヒである。両者は過去に21度の対戦があり、ナダルが18勝していた。しかし終わってみれば、ベルディヒのストレート勝ちであった。一体何があったというのか。調子が悪かったのだろうか。ハードコートの影響だろうか。どこか怪我でもしたのか。否や、このどれもが決して納得のいくようなものではない。では見方を変えよう。ナダルは万全だった。しかし相手のベルディヒが上だった。それほど力をつけてきたということだ。成長曲線は個人によって異なる。年齢が近い二人だが、それぞれの歩みは違う。若くしてグランドスラムを制したナダルだが、昨シーズンは欠場が相次いだ。一方、ベルディヒは安定した成績を残せずにいたが、メジャー大会で結果を出してトップ10入りを果たし、上位との差を埋めてきた。そして22度目の今対戦で双曲線が交わったのだ。

テニスというスポーツは、若くして冠を授かれば、息の長いスポーツとなるのかもしれない。タイトルを二分していた時代が長らく続いていた。けれども、そこに永遠はなく、いずれ新しい波が幾度となく押し寄せてくる。そうして返冠を済ませば、もはや誰のものかわからなくなってしまう。そして、もうそこには大きな波が迫りくる気配がする。

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