頻繁に行くことになる街案内 関東編

年度の変更が施される分岐に近づくにつれて、今年もまた、人々が新しい土地に居を構えることになります。そこで、その大多数が訪れるであろう関東、東京の主要な街について可視化する印象を与えたいと思います。あくまで、私の抱く印象であって、全てが事実ではありません。

【新宿】
かつてその西部は湿地帯で不毛な土地であったのですが、いまは世界でも類を見ない多大な予算を有する公共団体が超一流企業顔負けの高層ビルをそこに構えます。目と鼻の先にある公園を住処とする家なき子との対比が、資本主義社会の不条理を人の眼というレンズを通して映し出されます。また北部には「眠らない町」と呼ばれる歌舞伎町があって、そこに足を踏み入れると散りばめられた巧妙なからくりが訪れた人に時間の経過を忘れさせます。

blog-TT1-7

【渋谷】
その名の通り、周囲を幾つもの坂道に阻まれた谷の低地に中心部は在ります。行き交う混沌とした群衆に、すれ違いざまに脇腹を刺される、信号待ちしているときに背中を押される、そのような恐怖感に苛まれる空気が未だにどこか漂っている街です。少し中心を離れると、とあるIT系企業の社員が大挙する界隈があって、青春を謳歌するかのような滑稽な大人達の姿を垣間見られます。

tokyo_shibuya_tout_b

【目黒】
東西にはしる目黒通りと交差するように流れる目黒川の開渠が、京都・祇園の鴨川をどこか想起させる風情をもって街に趣をもたらします。その一方で、先日売却された目黒雅叙園に代表されるような、不動産バブル期以前に注目を集めるために投資先としてつくられたものの不動産価格が暴落した、負の遺産なるものがいくつか存在しています。東部の台地には日本有数の高級住宅地があり、債務返済に奮闘する西部の低地を東部の住人たちが覗き込むように見下すその視線を感じ取れるはずです。ちなみに、その地名を冠した目黒駅は目黒区ではなく、品川区に属しています(こうした駅名と区名が一致しない奇象はよく起こり得ます)。

b0169343_2391783

【品川】
東京湾を臨む太平洋側に位置し、しばしば船出の起点として機能する街、地域であります。こちらも品川駅は品川区ではなく、港区に属します。駅周辺にはホテルやオフィスビルが立ち並び、安らぎを求めてその地に足を運ぶ者はそれほど多くありません。昼食時には死んだ魚のような目をした傀儡が餌を与えられた金魚のように生き返る様を目にすることができます。

以上、特別区の名称にもなっている象徴的な街を取り上げて紹介しました。ほかに池袋、上野、東京、横浜などの街があります。今回はこの辺りで締めさせてもらいます。