叙述的特異点

春の息吹が時折顔をのぞかせながらも、未だ抗う姿を見せる寒波が私達を冬の日に連れ戻します。それでも私達は寒風を真っ向から突き進み、やがて花時を迎えるのです。

本日は、既刊を反芻しながら今後の方向を示したいと思います。ある意味では工学技術でない、文学表現の特異点を迎えたのかもしれません。

創設からいままで散散と社会の関心事をこの場で私なりに書いてきました。当初の目論見は私の抱く考えを他者に押しつけることでは全くありませんでした。自分の頭の中で処理し切れなくなった思考を、錯綜しつつうまいこと整理し、少し大きめの空間に置いておく程度の着想から始まりました。自己本位な愚考だったと思います。そんな船出にも関わらず、構図を描くヒントを得るなど一定の成果をあげることができました。

しかし、考えをまとめ上げていても、所詮はどこかから見つけてきたネタを少し加筆しただけに過ぎず、他の諸物と何ら遜色なく、違いを作り出せていませんでした。インプットするという行為は、一瞬の快楽と知性の豊かさをもたらします。ですが一方で、思考回路を同化される負の側面があります。その状況に陥っていたのかもしれません。そうすることを避けるために、これからは”ソウゾウ”という点に重きを置いていくことにします。どうなるのか、いまは予測できません。暴走するのか、芸術が批評を駆逐するのか。沖に出る前にいた港町の人びとにさえも、分かち合えなくなる恐れもあります。それでも、自身の変化を両腕を広げ伸ばすようにして快く受け入れられるように、新たな姿勢で異環境に順応していく心構えです。

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